蝉の鳴き声が聞こえて夏が来た。一歩ドアから出ると不快に近いこの音は、窓ガラス越しだと風情のある音に聞こえるから不思議だといつも思う。
盛りだというのにもう地面に転がった蝉がいて、真昼近い日差しの下だったので「酷暑だもんなぁ…」と勝手に納得して通り過ぎた。実際は気温など関係ないかもしれないけど、暑さにやられた人間は勝手に理由をつけて同情してしまう。
そんな酷暑でダメージを受けながら出社した金曜日、夕方に凄まじい雨が降って夏が来た。「電車止まったらやだな〜」「家までの道もこんなに降ってたらやだな〜」とこわごわ帰ったものの幸いにも電車を降りると雨は止んでいて、雨上がりの雲が一生かかっても真似できない複雑な絵画みたいに綺麗で夏の空気を浴びた。
今日も雷が鳴っていて、外には出てないけどきっと雷雨だったと思う。外では全力で避けたいのに家だと風情を感じるというところで、蝉と雷雨は似ていると思う。
気温がグッと上がって身体から絞られるような玉の汗が出る感覚があって、出社の時には服に冷感ミストを振りまき首に巻く冷タオルにハンディファンに日傘にデオドラントシートにと重装備で出なければいけなくて、それだけで疲労感がある。
そんな夏に少しでも「季節ならでは」を感じたくなったのか、久しぶりに無性にカルピスが飲みたくなって一番スタンダードな割って飲むやつを買った。人生で二桁数は飲んでいるはずなのに私はいつも自分のその時のベストな味覚に合わせて作るのがヘタで、久しぶりに飲んだカルピスは水の割合が多くて期待していたより薄くて、でもそれはそれで小学生くらいの思い出とリンクしていて良かった。
夏なんだけど無性に豚汁が飲みたくて、今日は豚ひき肉とごぼうと舞茸に椎茸と玉ねぎ長ねぎをゴロゴロに入れた具沢山の豚汁を作った。肉の脂をあっさりさせたくて豚ひき肉を炒めたらそのままフライパンに水を入れて茹でてザルにあけて脂を切ったので、あまりこってりしない感じになってくれたら嬉しい。
具は絶対に炒めて旨味をギュッと濃縮させたかったので、この夏にコンロを2つ使ってごま油でジュウジュウに炒めながらグラグラ煮るという苦行の味噌汁になったけど、朝からエアコンが効いていたのでセーフ。暑すぎてインドア生活が進んでいるので、逆に内臓がエアコンで冷えすぎないように冷たい料理は避けるようにしている。と言ってもアツアツだとそれはそれでストレスを感じてしまうので常温くらいが良くて、こんな知覚まで面倒な季節は2ヶ月くらい丸々休みにして欲しい。
先週から続いていた疲労から来る難聴は薬を飲み続けたら徐々に良くなっている感覚があって、と言っても耳鳴りがマシになっただけで聴力が上がったかはわからないんだけど、このまま改善してくれよ…!と次回の病院の予約までに祈るような気持ちで音楽と酒を我慢したプチ禁欲生活を続けている。「音楽と酒を我慢した」と書くと人生の嗜好がすごく制限された感があるな…と今こうして書きながら思ったけど、音楽と酒がなくても、なんとかのらりくらりと夏の酷さを楽しんでいる。


