散文録

つらつら書くのが楽しい。日記・作品の感想など

唐突に海

インフルエンザの予防接種に向かう道すがら、唐突に「海と自然に触れたい」と欲求が湧いた。
予約を受け付けてないので朝イチに行くのがベストとは言え、平日も睡眠不足なのに休日もゆっくり寝られないのか!と思うとなんだか理不尽な不満が芽生えて、この早起きを活かすべく接種後の足で衝動的に葛西臨海公園へ行ってきた。

一緒に接種して帰るつもりだった夫の戸惑う様に申し訳なく思いつつも、出かける気力もないよう…と仕事とゲームだけの日々を送っていた身には、どうしても今!自然に触れるという栄養素が必要だったのかもしれない。

曇天に「雨は降らないでくれよ」と祈りつつ、気の向くままにフラッと移動するのはなんともいえないワクワク感があった。衝動的にどこかに行くなんて今まであっただろうか?
何でも予約したり予定を決めたい性分だけど、知らないうちにキチキチとした窮屈感が溜まっていたのかもしれない。
どうでもいいけど『東京駅から電車で約15分』って意外と都心からアクセスしやすいんだなと思う。

7年ぶりくらいに来た葛西臨海公園、看板の「海」を指す方向に向かって適当に歩いた。
海と言ってもよく見る砂浜ではなくて、ここには人工なぎさという干潟がある。という事を今日初めて知った。

曇天から薄く陽が差し始めた朝10時、人のいない久しぶりの海は気持ちよかった。

砂浜にザザンと波打つ海岸ではないけれど、静かな干潟もこれはこれで新鮮。

陽が少しだけ強くなった時の、キラキラの水面が鈍色に光って綺麗だった。

油断してたら足を取られて靴を汚してしまって、なんだかすごく笑いながら渚を後にした。
それから緑を見たくて庭園っぽいところとか、木々を見ながら歩く。

木枯らしのような寒風が吹く中、橙色の葉を残して枯れかけた木がすごく「秋だな」って感じがして良かった。緑と茶とくすんだオレンジ色のコントラストが秋。
秋と言ってももう晩秋で冬が顔を覗かせているのが身に染みる寒さだったけど、それはそれで風情がある。

テイクアウトのホットコーヒーが普通の味なのに「ホットコーヒーってこんなに美味しかったんだ」と思うくらいにやたら美味しくて冷えた体に染み渡った。それくらい寒かったって事だけど、アイスコーヒー派がホットコーヒーの良さを発見できたのでヨシとする。

 

それから葛西臨海水族園に行って、銀箔を貼ったように光るマグロやキラキラのマイワシの群れをぼーっと見ていた。カラフルな熱帯の魚より、こっちの方が好き。

人工だけど、それでも視界いっぱいの水と遠くの海の光景は目に優しい。
そうそう、こういうのが見たかったんだよと思いながら、緑いっぱいに生い茂る自然の道を歩いて公園を後にした。

適当にブラブラ歩いて水族園に行って帰ってもランチタイムには間に合って、本当に早起きした甲斐があって嬉しくなった。帰る頃に人も増えてきたので、静かな海と緑を感じて歩けたのはいいタイミングだったと思う。

今季一番の寒気と言われた今日、どんより曇天だし寒い海風にも吹かれたけど、それでも衝動的に電車に乗るワクワクさと、期待通りの自然の中を歩けたのでいい栄養が摂れたと思ってる。

昨日寝る時も今日起きた時もこんな日を過ごすとは思ってなくて、予定から外れた休日が思いの外疲れを飛ばしてくれた気がする。体はクタクタだけれども。
またフラッと行って次は野鳥でも眺めて帰りたい。そして今日は早く寝ると決めている。