散文録

つらつら書くのが楽しい。日記・作品の感想など

旅行記①:出雲行の夜行列車おりた時から

「人生でやっておきたいこと」というささやかな夢の一つが夜行列車に乗ることだったんだけど、その念願がついに叶い、夜行列車「サンライズ出雲」に乗って島根県の出雲・松江、鳥取県鳥取砂丘を巡る旅をしてきた。

最高に楽しい思い出となったので、大好きな名曲『津軽海峡・冬景色』の冒頭に寄せたタイトルで旅行記を書く。
正確には「出雲行の夜行列車 乗った時から」なんだけど、まぁ気にしない。
激戦の切符を取った時の記録はこちら。

ha49re.hatenablog.com

 

21:50東京発のサンライズ出雲に乗るため、その日は在宅勤務とし定時ジャストで仕事を終える。
最後に旅行に行ったのがコロナ前で、数年ぶりの旅行の準備も何か忘れてそうで怖い。が、それもまた楽しい。
準備を終えて家を出る。

久しぶりに人混みの東京駅へ行き、お惣菜屋をウロウロしながらお弁当を買い、おなじみの駅弁屋「祭」で駅弁も買い、ホームへ向かう。

 

激戦により切符を勝ち取ったサンライズ出雲だが、ここでもうひとつ激戦がある。
それがシャワールームを使うための「シャワーカード」で、限定20枚で先着順なので早めに並ぶ必要がある。
なのでこのサンライズ出雲、発車は21:50でホームに電車が来るのは21:25頃なのだが、21:00前にはもう人が並び始める。と、事前に読み漁ったブログやTwitterのリアルタイム情報で学んだ。
開始1分足らずで満席になった瞬殺の人気列車だ。せっかくなら「列車でシャワーを使う」というレアな体験もしてみたいと思う人も多いだろう。私もその一人だ。

祭には乗りたい。
戦には勝ちたい。

という事で、私達も21時頃に並び始めることにする。
事前に調べたシャワーカード券売機の最寄り乗車口に行くと、もう6〜7人くらい並んでいた。
多分、イケるかな…とそわそわしながら最後尾につくと、すぐ横に電光掲示板が見えた。
念願の案内が表示され、「ついに来たわね…」と心躍る。


小田原・熱海方面の行き先のホームに「出雲市」と表示される違和感に、なんだかワクワクする。
ちなみにサンライズ出雲サンライズ瀬戸は岡山まで連結されて一緒の列車なので、この電光掲示板の表示は数秒おきに「サンライズ瀬戸 高松」にチカチカと切り替わる。
この切り替わりもレアな光景で、しばらく見つめてしまった。

そうこうしているうちにゾロゾロと後ろに人が増えていき、ぐんにゃりと曲がった長い列がホームですくすくと育っていた。
夫婦やカップル、女性二人旅っぽい人もいたかな?やはり他の方も電光掲示板の写真を撮っていて、「ですよね」と思ったりする。

他のホームにやってくる新幹線を眺めたり、瀬戸と出雲でチカチカ切り替わる掲示板の動画を撮ったりしているうちに「まもなく 9番線に…」というアナウンスが始まり、いよいよサンライズ号が入線してくる。

ついに、念願の夜行列車が目の前に来た。ワクワクなのか感動か、形容しがたい感情を胸に列車を見つめる。
周りも皆スマホやカメラで撮影していて、一層のイベント感があった。

感動も束の間、手短に動画を撮り、ドアが開くとシャワーカード券売機に向かってまっしぐらだ。このせわしなさも、いま思い返すと思い出深い。
券売機前から車外までズラァッッと並ぶ大蛇のような列に圧倒されつつ、無事に買えてホッとする。

戦利品のシャワーカード

無事に目的を果たし、発車まで20分ほど時間もあるので写真を撮ったりする。
2階建で、窓はすべて一部屋ごとの個室になっている。

私も夫も同じ一階で、ほぼ目の前の近い部屋だ。

行き先を示す少しレトロな表示が好き。

岡山までは、サンライズ瀬戸も一緒。


ここまで撮ってあと10分あるので、一旦キャリーケースを個室に置いてホームの売店に行く。楽しい〜〜〜!と小走りで向かい、高揚感に任せてお菓子やおつまみをたくさん買ってしまった。

そして浮かれたまま自分の部屋に戻り、うっかり荷物を置く前の部屋を撮り忘れるという失態を犯す。惜しい気もするが、まぁいいか。
調子に乗って色々買ったものを並べたテーブルがこちら。
これから食べる深川弁当に、明日の朝に食べる牛たん弁当。お水とお茶にビールの他に、スタバのドリンク。お菓子とおつまみもあるけど、結局ここでは食べきれなくて旅館や帰宅後にいただいたというオチ。楽しかったー

↑お弁当の間にあるのが備え付けのドリンクホルダーとプラカップで、じゃがりこ右隣にコンセントが挿せるのでスマホの充電もできる。ありがたい!

 

↑テーブルの真下に枕と布団と、浴衣もある。浴衣は使わなくて持参のパジャマでくつろいじゃった。

コートだけ写り込んじゃったけど部屋はこんな感じ。窓の左部で照明のオンオフや暖房の調整ができる。デジタル時計もあって、アラームの設定も可能。
小型のキャリーケースを入口に置いて、あとはベッドの足元脇にバッグとかを置けるくらいの狭さ。
でもこのこぢんまりした狭さが、秘密基地感があって良い。

車窓からはホームの足元が見えて、かがんで見上げると立っている人の顔も見られる。
ホームをこの角度で見る事がないので、レアな体験だった。

 

ウキウキと写真を撮ったりホームの人を眺めているうちに、ついに発車時刻が来た。
静かに滑るように電車が動き出す。
約12時間の長い旅路が、いよいよ始まった。

いつもより低い角度から夜のビルが見える。まだ行ったことのない東京ミッドタウン八重洲や、見慣れた有楽町イトシアが見えてきて高揚感がぐんぐん上がっていく。先月飲みに行った会社近くの駅ビルも見えて、飲みのメンバーにお土産と一緒に自慢しちゃおう…とか思ったりする。
次は品川…ではなく新横浜。のぞみ停車駅とごっちゃになってて、品川も停まると勘違いしてしまってた。

横浜駅のホームでこちらの色んな窓に手を振ってる中年女性二人組がいて、手を振り返したらめっちゃ嬉しそうに両手で振り返してくれて楽しかった。
が、てっきり見送りか何かの人だと思ったらそのまま乗車してきて、車内で会ったら逆に気まずくないかな…とか無駄に心配したりした。一期一会だと思って調子に乗っちゃったよ…
結局最後まで鉢合わせしなかったけど、旅のこういう出会いも面白かったりする。

新横浜を出たところで、お弁当を食べよう。
深川弁当を噛み締めながら、旅情に浸る。
次は、熱海。

部屋の照明を全て切ると、真っ暗で外の灯りだけになる。
ガタンゴトンという音と暗闇で、湧き上がるような高揚感も徐々に落ち着いてきた。
代わりにじんわりとした感動のようなものに浸る。

ビールを飲んでいると夫が遊びに来て、神奈川と静岡の県境や終電時刻の話など、とりとめのない話をする。
そうこうしているうちに0時もまわり、そろそろ寝ようか…と部屋に戻る。

が、サンライズ出雲に乗車してみて思ったのが、この列車は結構揺れる
岡山以降は揺れも大きく酔いやすいとは聞いていたが、東京出発時点で早くも揺れるな…と感じていた。カップに注いだ飲み物は、すぐに飲みきった方がこぼれなくて安全だと思う。

走っている線路はいつも使う在来線や新幹線と同じなので、普段の乗車でそこまで揺れを意識しないのは、しっかりしたシートに座って安定しているからか…とシートの大事さに改めて気づく。
横になると慣れない体勢だからか余計に揺れを感じやすい気がする。翌日もガッツリ観光するので、ここはしっかり寝ておきたいけど寝られるかな…と心配になった。

翌日は6:27の岡山到着で瀬戸号と出雲号の切り離しを見たいので、6時に起きようと夫と話していた。6時ちょうどに備え付けのアラームをセットし、念のため5:40にスマホのアラームをセットして、カーテンを下ろしアイマスクをして横になった。
おやすみなさい。

 

 

ヴン ヴン という音で目が覚めた。
スマホのアラームで起きた5:40。おはようございます。
結果から言うと横になった後は10分くらいで眠りについたので、5時間は寝られたと思う。
寝付きが悪い方だが、割と寝られて良かった。変な夢も見なかった。

カーテンを上げると、暗い空に月が浮かんでいた。
最高に旅情ある朝だと思う。

ぼんやりとお茶を注ぎながら外を眺める。
残念ながら曇っていたのと窓の向きの関係で日の出は見られなかったが、徐々に白んでいく空を車窓から見るのも乙だった。

岡山で停車後にホームに出て写真を撮りたかったので、一旦着替えて夫の部屋に行く。いよいよ要所、岡山に到着だ。

ここでサンライズ出雲サンライズ瀬戸の切り離し作業を行う。
私が行った時には既にたくさんの人が写真や動画を撮っていた。
確かにこのレアな光景は、特に鉄道好きの方は絶対収めておきたい光景だろう。
無事に切り離しが終わり、先にサンライズ瀬戸が発車を迎える。

↑東京から一緒に走った列車が、ここで分かれる。
下の「貨物」という表示も含めて滅多にお目にかかれないと思うので、起きて良かった。
6:31、サンライズ瀬戸が旅路を再開した。
袂を分かつ車輌を見て、なぜか「ありがとー!」という気持ちが湧いた。
次はサンライズ瀬戸に乗って、高松や小豆島を巡る旅をしたい。

そして出雲へ行く列車も旅を再開する。
それまでは曇り空だったが、岡山を出た直後に朝日が見えた!

↑線路・車輌が好きなので、個人的にすごく好きな光景。

目も完全に醒めたところで、ここで獲得したシャワーカードを使うべくシャワールームに向かう。
混んでたら後にしようと思ったが、幸い誰もいなかった。

サンライズ出雲のシャワールームは、シャワーカードを差し込むと合計6分間だけお湯が出る仕組みになっている。お湯は何度も一時停止できるのと、お湯の出が合計6分というだけなのでシャワールーム自体の制限時間はない。
備え付けのボディソープもある。

お湯の時間もあるのでガッツリ全身ではなく、足元の辺りだけ洗って手短に出る。
ちなみに岡山を出て割と揺れの大きい区間だったので、転びはしないものの多少のアトラクション感があった。

シャワーカードを買った時はとても券売機の写真を撮る余裕はなかったので、ここでシャワーカードの券売機も撮る。表示は当然「売切れ」になっているが、何分くらいで売切れたのかが気になる。

ついでに自販機の写真も撮る。サンライズ号には車内販売がなく自販機だけなので事前に飲み物は買っておくと良いとブログ等で読んでいた(発車前のアナウンスでも言ってた気がする)が、やはりお茶・お水が綺麗に売り切れていたので買っておいて良かった。


ちなみにこのサンライズ号には「ラウンジ」というものがあり、一面の車窓を眺めながら食事をしたり会話ができたりする。が、やはり人気なのか人で埋まっていたので写真は撮らなかった。
個人的には個室で楽しむ方が性に合っているので、これはこれでヨシ。

 

ひとしきり散策を楽しんだ後は、部屋に戻って朝ごはんの駅弁を食べる。
いただくのは、東京駅で購入した「炭火焼風牛たん弁当」

nihonbashidaimasu.co.jp

え!?朝から牛たん食べていいの!?という感激。
今回の旅には縁のない仙台だが、これも駅弁の楽しさ。
何気に紐で温めるタイプのお弁当は初めて。

紐を引っ張るとほんわりと温かくなってきて、寒い朝にはありがたい。
蓋を開けるとほかほかといい香りがした。

牛たんは断然薄切り派なので、ワクワクが止まらない。
牛たんから肉汁が滴っていて、噛みしめると肉の旨味がジュンワリ染み出してくる。
うまい!

アツアツ、ハフハフの麦めしも文句なしに美味い。
藻塩で引き立つシンプルな旨さもいいが、青唐辛子味噌でいただくと麦めしが秒で消える。おいしい!
大盛りサイズでもイケるわね…とか思いながらあっという間に完食。
念のため、食後に酔い止めの薬も飲んでおく。

 

この辺りから景色もガラリと変わり、自然豊かな山の間を列車が駆けていく。

面白いのは今この瞬間まで青空のいい天気だったのに、一瞬で山を越えると次の瞬間には霧深い真っ白な景色になったりすること。
雨が振らなきゃいいかな…とか思いながら揺れに身を任せると、だんだんと眠くなってきた。
到着までまだ2時間ほどあるので、景色はもったいないが少しだけ仮眠をとる。

 

起きてから少しだるさの残る身で、ゆっくり身支度を整える。
そうこうしているうちに、ついに宍道湖が見えた。

この日はこの後に出雲を観光し、翌日に宍道湖に行く予定なので期待が高まる。
海でもなく川でもない、穏やかな湖の水面をこうやって見るのは初めてかもしれない。
のしかかりそうな曇天ですら、風情を感じた。

ゆるゆると身支度を済ませ荷物をしまうと、いよいよ長く短い旅路も終着駅だ。
終点、出雲市駅に到着するアナウンスを耳に刻む。
寂しさと満足感が入り混じりながら、ゆっくりと降りた。

↑東京駅では撮れなかったので、ここで前方の写真を撮る。
12時間、ありがとう。

 

ちなみに酔いやすいと言われた岡山以降だが、結果的には出発からを含めて一切酔わなかった。
酔い止めを飲んだのもあるが、部屋が比較的揺れにくい一階だったのと、下を向くと酔いやすいと書かれていたので事前に必要なもの(メガネ・コンタクト・化粧ポーチ等)はすべて出しておいて、下を向いて荷物を出すことのないよう準備したのが大きいかもしれない。
こういった情報をブログに書き記してくれた幾多の方々に感謝。

 

こうして念願の夜行列車の旅を果たし、一つの旅が終わった。
つらつらと長らく語ったが、今回の旅はまだ始まったばかりだ。
これから出雲の神社を巡り、松江・宍道湖鳥取砂丘との出会いも待っている。
まずは荷物を預けようと話しながら、駅の出口へと向かった。

つづき

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