散文録

つらつら書くのが楽しい。日記・作品の感想など

出雲行の夜行列車とれた時から

大好きな『津軽海峡・冬景色』の冒頭に寄せたタイトル。
ずっと乗りたかった夜行列車「サンライズ出雲」の切符が取れて嬉しすぎるので書く。

私の中で「人生で体力があるうちにやっておきたいこと」の一つが夜行列車に乗ることなんだけど、いつかは…と憧れていた『北斗星』も乗れぬまま終了してしまい、気づいたら東京発で定期運行している夜行列車は『サンライズ瀬戸・出雲』のみとなってしまった。
サンライズ瀬戸・出雲とは↓

www.jr-odekake.net

東京発で最後ともいえるこの夜行列車もいつまで運行してくれるかわからない。
コロナも落ち着きつつある今、このチャンスに乗るしかない!と旅行を決めた。
瀬戸と出雲で迷ったが、出雲大社と松江に行ってみたかったので今回はサンライズ出雲に乗ることにした。

が!このサンライズ出雲の切符、現在とるのがすごーーく難しいプラチナチケットになっている。
切符の予約は乗車日1ヶ月前の10:00から開始なので、ネットで10時ジャストに申し込むか…と思っていたのだが、それでも取れる確率はだいぶ低いらしく、どうやらJRみどりの窓口にて10時打ちなるものが必要だとネットで書かれている。
10時打ちって何よ…と調べると、要はみどりの窓口に行き10時ちょうどに専用端末で予約してもらうよう10時前にお願いする非公式のサービスで、非公式である故に駅や駅員によっては断られたりもする高ハードルなものらしい。
「10時打ち」で検索すると数々の経験者、鉄道ファンによる詳しい情報が書かれている。

いやいやいや。さすがに10時打ちはしないわ。ハードル高すぎだし。
と思っていた。最初は。


結局やることにした。

(どうしても行きたくて…)

 

予約当日にお願いして断られたら悲しすぎるので、まずは目的のみどりの窓口へ下見へ行き、切符の申込書をもらいつつ10時打ちをお願いできそうか様子を伺うことにした。
勝負はもうここから始まっている。

ちなみに、ネットの方でも乗車1ヶ月前の更に1週間前に申し込める「事前予約」というものがある。これに申し込んでおくと10時打ちと同じ1ヶ月前の10時に自動で予約を取ってくれるというものだが、その予約も先着順となるため確実ではない。
が、窓口でダメだった時の保険として事前予約も申し込んでおいた。

 

予約の3日前、出社の昼休みにみどりの窓口へ行く。
幸い先客はほぼいなくて、声をかけてくれた窓口の人に話をしてみる。
嫌な顔されたらどうしよう…と思いつつ、「今日ではないんですが、10時ちょうどに予約をしていただきたい場合はどうすれば良いでしょうか?」とこわごわ訊いてみると、ありがたいことに窓口のお兄さんが懇切丁寧かつフランクに教えてくれた。

これに気をよくして「実はサンライズ出雲なんですが」と予約の混み具合や、この駅で10時打ち自体の順番待ちはあるか(10時打ちは基本的に最前列でないと成功しないことが多いので)、仮に9時半くらいに着いた場合は最前列でいけそうか等を調子に乗ってドンドン訊いてみた。が、お兄さんはカレンダーを見ながら「この時期だと」「この曜日なら」と気さくに説明してくれて、ちょっと感動した。

窓口のサービスの方にはあまり使わない言葉かもしれないが、この時のお兄さんの丁寧さと細やかさと親しみやすさに「ホスピタリティ」って言葉がぴったりなくらい、緊張していた身にはありがたさが沁みていた。
サンライズ出雲に乗りたい!」とギラギラした女に親切にしてくださってありがとうございました、あの時のお兄さん。
持ち帰った申込書は、いつもより丁寧な字で書いた。

 

そして予約当日。
9時30分ちょうどくらいに窓口に着く。

10時打ちの列があったらどうしよう…と心配してたが、幸い人はいなかった。
あの時のお兄さんいないかな…と思ったが2つある窓口は両方ともお姉さんだ。
お兄さんは親切だったけど、お姉さんに嫌な顔されたらどうしよう…!とビビっていたが、「10時に予約をお願いしたいのですが…」と申込書を見せると、お姉さんが希望の詳細などをすごく丁寧に訊いてくれて、めちゃめちゃありがたかった。

事前に聞いていた通りに列の脇で待機しつつ「10時打ち余裕そう…早く来すぎちゃったかな?」とか思っていたら、なんとその10分後に10時打ちの人が来た
私の後に並ぶよう言われるのを聞いて鼓動が早まる。やっぱり早く来て良かった…!

そんな冷や汗をかきながら待ち、5分前に窓口に呼ばれる。他に客はいなかったので2人目の人も隣の窓口に呼ばれていた。
私が緊張してたからだろうけど、室内が静かな緊張で満ちていたように感じた。

3分前、お姉さんが腕時計を確認しながら、端末に入力を始める。

2分前、静かだった窓口に、急にゾロゾロと客が入り始めた。もしかして10時打ち?とちょっとだけ焦る。30分前から待っていて本当に良かった。既に窓口は私の番だ。

1分前、端末に入力を終えたお姉さんがボタンを押すために中指を構えている。このピシッと固定された中指の光景を、一生覚えておきたい。

そして

10:00 ジャスト!

ツッタカタンタン!タン!タン!
「シングル2部屋取れました!」

とれた!!!!!!!

「ありがとうございます!!」

…思わず大きい声が出てしまった。
そこそこ人いたのに、恥ずかしい。

本当は第1希望はサンライズツインという2人用の部屋だったのだが、禁煙の部屋は2部屋しかなく激戦中の激戦となるため、最初から取れないだろうと踏んでいた。
希望の禁煙で、シングル個室2部屋を取っていただいただけで御の字もいいとこだ。
しかも「部屋は離れても大丈夫です」と伝えていたのだが、番号を繋げて取っていただいていた。

この一瞬のお姉さんの手さばきが鮮やかすぎて、誇張抜きでちょっと震えた。
ぶっちゃけちょっと感動した。
お姉さんに大感謝。

支払いも全て済ませて窓口を出たら10時3分だった。
この3分間がすごーく濃く、長く感じた。
駅を降りるエスカレーターで小さくガッツポーズしちゃった。

ちなみに申し込んでいた事前申込は満席で取れなかったと10時1分にメールが来ていた。
まさに秒殺じゃない?これ…

こうして駅前のカフェに入り、噛み締めた勝利のサンドイッチが美味しすぎて沁みた。
切符を取るためだけに午前休を取った甲斐があった。
午前にマストな仕事がなくて良かった…。

 

ちなみに乗車する日は翌日も平日なのだが、それでも1分足らずで満席ということは激戦と言われる金曜は更に瞬殺と予想されるので、今回の旅行日程はとてもラッキーだったと思う。
しかも私が予約した翌日は記念列車で10時打ちが混み合う日だったらしく、そういった日に当たらなかったのも本当にツイていた。

今回、切符を取るにあたって数々のブログを読み漁ったのだが、知識や経験談を細やかにブログに綴ってくださっている鉄道ファンの方々には感謝とリスペクトの気持ちがある。
もちろん対応にあたってくれたみどりの窓口の方々への感謝は言うまでもない。

こうして念願の夜行列車が取れたので、有休の申請と宿と帰りの飛行機の予約を一気に済ませ、初の島根観光のために色々なサイトを読み漁る日々を過ごしている。

上野発の夜行列車で「津軽海峡・冬景色」ではないが、出雲行の夜行列車で「松江宍道湖・夕景色」が見られるのが本当に楽しみで仕方ない。
出発は来月なので、無事に行けたら「出雲行の夜行列車おりた時から」をタイトルにして、ぜひ夜行列車の乗り心地を書きたい。

この刺激的な数日間、ほんとーーに楽しかった!
切符が取れたこの思い出が、もう眩しい。

出雲行の夜行列車とれた時から、いや取ると決めた時から、既にこの旅は始まっている。

 

追記:
念願のサンライズ出雲 乗車記

ha49re.hatenablog.com