散文録

つらつら書くのが楽しい。日記・作品の感想など

5感で味わう おいしいミュシャ展

『おいしいミュシャ 5感であじわうアール・ヌーヴォー

artexhibition.jp

これを見たいがために東京から大阪に日帰りしてきた。
道中の日記はこちら

ha49re.hatenablog.com

電車を乗り継いでやってきた、堺 アルフォンス・ミュシャ館。

『描かれた至福。』ってコピーがいい。

アルフォンス・ミュシャの絵の中でも女性画が特に好きで、ふくよかで肉感的で、でも健康的で丸みを帯びた豊満な肉体はまさに「豊か」で「満ち」ていて、滲み出る美しさがいい。
独特の色合い・花の描き方・デザインも大好き。

チケットは当日に受付で購入。510円は破格に感じる。
中はそこまで混んでなく、ゆっくりと観られたのですごーく満足。

最近は国立西洋美術館とか混んでいる美術館っていうのもあって、基本的に画は他人同士で譲り合いながら観る…って感じだったのが、こちらは午前中で人が少ないせいか他の人と画を観ることもあまりなく、ありがたく独占してじっくりと観られた。

ミュシャの女性画の何がこんなに惹かれるんだろうと思いながら間近でよくよく見たらわかった。瞼の描き方だ。
肉感って感じの厚みある上瞼はもちろん、下瞼の仄かな厚みや影がすごく好きで、思わず見つめてしまう。
視線が合わない流し目線も美しいながらこちらに目を向ける眼差しにも目を逸せなくて、色んな画の女性と見つめ合ってた。
美しい。

mucha.sakai-bunshin.com

ミュシャ館のサイトにもあるように展示は5つのセクション+エピローグで構成されていて、

Section.1 味覚 おいしさを、あじわう
Section 2 嗅覚:香りを、あじわう
Section 3 触覚:肌ざわりを、あじわう
Section 4 視覚:美を、あじわう
Section 5 聴覚:音を、あじわう
Epilogue おいしいJOBー当時の大人の嗜好品ー

と、それぞれのコピーにも趣を感じる。
香りを、美を「あじわう」って表現が優雅で好き。

セクションごとに展示が分かれているわけだけど、嗅覚のコーナーに差し掛かった瞬間にいい香りが漂ったし、聴覚のコーナーに入ると小さく弾むピアノが聴こえてきたりと、同じフロア内ながら会場はすごく計算されて魅せてくれるんだなと思った。

漂ういい香りは画にちなんだ香り(の染み込んだ花のモチーフ)が実際に展示されていて、「香りを嗅いでみてください」の案内通りにすると香水とも生花ともお香ともとれる香りで、画のイメージが立体的に膨らむ。
目の前の視覚には美、嗅覚には芳香…と美しい瞬間を味わった。
美術ってすごい。

最後のエピローグの展示では当時の嗜好品の煙草の広告が展示されていたけど、恍惚感のある表情を浮かべた美人と女性に刺さる色使いの広告に、女性に煙草が普及した一因は絶対にこれだよなぁ…とぼんやり思ったりした。


そして美術展のお楽しみがミュージアムショップ。
美術館クリアファイルコレクターなので大小のクリアファイルに、図録に、あぶらとり紙もめっちゃ可愛かったので思わず買っちゃった。ポーチから出すたびになんかいい気分になれそう。

5感の「味覚」に関しては会場で試食などができるわけではなかったが、その代わりに限定のフィナンシェが売られていたのでお土産に買って帰った。
もちろんミュシャデザインのパッケージで、シャンパン味のフィナンシェ。
当時のシャンパン味のお菓子のパッケージの展示を見て「シャンパン味って何味??」と思っていたので、家でじっくり答え合わせできるのは嬉しい。

で、実食する。
蓋を開けると、中に籠もっていた甘い焼き菓子の香りがふわっと広がった。
甘くていい香り。
原材料にハッキリと「シャンパン」って書いてあるのがなんだか新鮮で、シャンパン味に期待しながら一口大のフィナンシェを口に入れる。
シャンパン味…わからん…でも甘いけどキリッと引き締まってる…」とか考えてたら喉越しの後味にシャンパンの風味が追っかけてきて「あーこれか」ってなった。
楽しい。そして美味しい。

シャンパン特有の風味で甘さも引き締まってて、独特の美味しさがある。
これに合わせてちょっと高めの(ティーバッグだけど)紅茶を淹れたんだけど、味の良さはもちろん湯気の温かい空気でフィナンシェの香りも広がって、焼き菓子・紅茶・シャンパンという優雅なコラボの味わいがより美味しいように感じた。
帰宅した後にも味覚・視覚・嗅覚が楽しめるというオマケが嬉しい。

想像よりずっと、5感が美味しく満たされて満足。
ごちそうさまでした。