散文録

つらつら書くのが楽しい。日記・作品の感想など

ルーヴル/ブルターニュ 都内でフランスを巡る

ルーヴル美術館展 愛を描く』と『憧憬の地 ブルターニュ』の展示を観に、美術館をハシゴしてきた。
両方とも終了間近だったので、ギリギリで行けてめっちゃ満足。
夜はフレンチだったので、都内でフランスを巡る1日を過ごした。

ルーヴル美術館展 愛を描く』は六本木の国立新美術館
会期終了前の最後の土曜日だからか、午前中でチケットを持っていても40分待ち。でも40分待つ価値は全然あった。

それはもうどの絵画を観ても文句なしに美しかったワケだけど、その美しさから画家の『この!裸体を!とんでもなく!美しく!描く!』みたいな『欲による表現への熱意』みたいのをバシバシと感じてた。完全に勝手な捉え方だけど。
乱れた布の陰影、裸体の描き方、目線の表し方…どれも素通りできない『力』みたいなのがあって、人の群れに紛れながらまじまじと観た。
特に女性の乳房や臀部の丸みや白桃のような色合いはどれも美しくて、美しいんだけど美しすぎて執念すら感じてしまった。

最初に『愛の神アモル』の《アモルの標的》を観たんだけど、『恋愛』を司る神でありながら人間の赤子の姿であるアモルは、むちむちでぷりんとした身体の丸みと「どこ見てるのかな〜?」と話しかけたくなる赤子独特の目線があって、とにかく可愛い。赤子の可愛らしさが存分に表現されていて、その可愛らしさに『赤子への慈愛だわ…』とか思ったりした。これも愛。

一方で《パンとシュリンクス》でまさにシュリンクスを抱かんとしてるパンの目が真っ黒な空洞のようでどこか鬼のように感じたりして、暴力と紙一重な愛の描き方も様々にあって面白い。

この展示のメインの一つである《かんぬき》は、とにかく男性の目線の描かれ方が好きだった。
この絵画の、特に女性の心情の捉え方については諸説あるというか想像の余地が残されているわけだけど、その「想像の余地」こそが官能的な魅力なんだろうとなんとなく思う。

展示は章ごとになっていて、最初は神々の愛、そこからキリスト教の愛、人間の愛…と続いていたんだけど、個人的には庶民の愛で描かれる風俗的な生々しさに惹かれた。

面白かったのが『エロティシズム』のテーマだけ部屋の壁一面がワインのような赤紫になっていて、その薄暗い部屋で官能的な絵を群れになった人々が凝視しているという図がどこかシュールだった。もちろんその群れに自分たちもいたワケだけど。

『理性』と『欲』の狭間で揺れる様を描いた作品も色々あるながら、大体理性が負けているのが面白い。まぁそういうものを描きたくなり、鑑賞したくなるんだろうなとは思うけれども。

慈愛、恋愛、親子愛、情欲、死…と『愛』に絡む作品をお腹いっぱいに観られたと思う。
どの絵も特に目線の描き方と布の質感がすごく好きだった。
絵から透ける画家の情念が強く感じたというか、『美の底には欲がある』というよくわからないフレーズが頭に浮かんでいた。こういう念の強い絵に惹かれてしまう。

美術展ではクリアファイルを絶対に書いたくなるので今回もお土産はクリアファイルと、夫が必ず買う図録も買って、あとなぜか鎌倉銘菓『クルミッ子』とコラボしていたのでそれも買った。神奈川の友人に贈ってもらってから、クルミッ子大好き。

 

それから上野に移動して、国立西洋美術館で『憧憬の地 ブルターニュ』を観る。
こちらは全く並ばずに入れたので、この順番で正解だった。

並ばずとはいえ観客は結構いたものの、ルーヴルよりゆっくり落ち着いて観られた。
『画家たちは フランスの最果てを目指した』というフレーズとクロード・モネ の《ポール=ドモワの洞窟》の絵に惹かれてこの展示に行こうと思ったんだけど、なんとこの絵は写真撮影OKだったので嬉しい!
『画家たちは フランスの最果てを目指した』のフレーズ、「人々が描きたくなる土地」というのがいい。
海・雲・海岸、描かれるものは似ているのに、くすんだオレンジの色合いに郷愁を感じたり爽やかに青々しかったりと、描かれ方が画家によって違うのが面白い。
風景画の他に人物画や死の悲嘆なんかも描かれていたんだけど、個人的には風景画の印象が強かった。

ルーヴルの愛というか情欲を観た後のブルターニュの海景はなんだかより清々しく感じたような気がしていて、凪のような穏やかな気持ちで眺めていた。
もちろんどちらも満足なんだけど、方向性が少し違うのが良かったと思う。

ブルターニュの方もクリアファイルと図録を購入。クリアファイルは2展で7枚も買ってしまった。
綺麗だから満足なんだけど、最近はチケットも電子化してるのでチケットホルダーのファイルなんかは使い道がなくなってきてるのが寂しくはある。


で、せっかくフランスの展示をハシゴしたから(?)たまにはご飯もフレンチが食べたいなと思って、夜はフレンチを予約した。
気軽に行けるところがよくて銀座のカジュアルにいけそうなお店を選んでみたんだけど、初めてのお店ながらいいところだったと思う。
ワインの味にまっっったく詳しくないながら、軽くて飲みやすい赤と牛ホホ肉が美味しくて幸だった。最初のテリーヌから美味。

めちゃくちゃ久しぶりにフランス料理を食べたんだけど、最後のデザートまで満足。コース料理って最初は物足りない気がするんだけど、デザートと食後の紅茶でお腹いっぱいになるようよく計算されてると思う。
ちょこっとフランス気分な1日を、ほろ酔いで〆た。

本当はこの美術展は先月に行くつもりで有休も取ったのに行けなかったから、今回ギリギリで行けて本当に良かった、というかホッとしている。
六本木→上野→銀座と何も考えず巡ってしまったけど、テーマを決めて色々行ってみるのも楽しい。
行きたい美術展はまだまだ色々あるので、次はミュシャ展に行きたい。