散文録

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旅行記⑥:出雲行の夜行列車おりた時から

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時刻は18時15分。間もなく日の入りを迎える。
想像以上に旅館に満足してしまって、少しゆっくりし過ぎたかもしれない。
急ぎ足で絶景スポットへ向かう。
少し歩くと大きい橋があって、そこから見ようとしていた。

この日の天気は予報通りの曇りだったが、昼間は時折日差しも見せてくれた。
この時も厚い雲に隠れていた太陽がチラリと顔を覗かせてくれて、嬉しく思いながら小走りになる。

橋を歩きながら、ちょうど太陽が見えた。

ちょうど夕陽が水平線に沈むところ。

海でもなく川でもない、大きな大きな水鏡。と、この光景を見て思った。
この厚い雲も、湖に映ると躍動感すら感じる。

本当はもっと絶景スポットが他にあっただろうし、天気が良ければ広告のようなオレンジに染まる夕焼けも見られたのかもしれない。
でも私は、この空を映す宍道湖を見られて本当に満足だった。

雲の間で見え隠れする夕陽が、まもなく水平線に消える。
太陽が線になり点になり、その点が小さくなり消えていく様を、最後まで見つめた。

夕陽が完全に見えなくなった後も、熱を帯びる空を撮りながら橋を歩く。
熱を帯びた空が平熱となり、徐々に温度が下がり始める。
旅館の夕食まで時間があるので、温度が下がっていく空を見ながら散策を楽しみたい。

夕陽の残り香のようなオレンジ色がいい。
そして磨かれたような水鏡に映る雲が、芸術のように美しく見えた。

雲ひとつない天気ではこの光景は見られない訳で、これはこれで恵まれた天気だったと思う。

橋を渡ったところに『島根県立美術館』がある。
入って見たかったが、あいにく18時半で閉館だった。今回の旅の心残りの1つ。

もうすっかり島根が好きになっていたので「絶対また来よう」と思っていて、次回はこの美術館に来よう。と話しながら宿へ戻ることにした。
この辺りから空が一歩、夜へと近づく。

↑右手に見える建物群の1つに今日の宿がある。灯りが反射する様もとてもいい。

 

こうしてこの旅で見たかった「松江宍道湖・夕景色」が終わった。
一面の夕焼けではなかったにしろ、湖に映る空と雲の躍動感を間近で見られたので大満足。
この水鏡の下にしじみや鰻などの美味が眠ってると思うと、さらに幸。

さて、そんな宍道湖の幸を更に堪能すべく宿に戻る。
夕陽の後は、お夕食が待っている。

予約した時間になると「お持ちして良いでしょうか」と仲居さんが来てくれた。
部屋にはドリンクメニューも置いてあって、気分の良さに任せて最初から日本酒も頼んじゃう。

きゃ〜〜〜〜〜〜
お盆に載った色とりどりが、まるで宝船。

前日の出雲での夕食で「やまたのおろちって酒がある!」と話しつつ飲まなかったのが、ここで頂けたことが嬉しい。
冷酒でいただきます。

シャクシャク、コリコリ、とろり…と食感が楽しい前菜は、言うまでもなく美味しい。
春菊と椎茸の旨味が濃くてビックリした。
とろり…という食感はお刺身で、甘い醤油が美味しくて後でお取り寄せしちゃったくらい。
至福の時間に、お酒も一瞬で消える。
写真は撮っていないけど他にもお酒を頼んで『玉鋼』っていう日本酒も頂いた。名前がカッコいい。

海の幸、山の幸、魚介に野菜にお肉…とキラキラの宝船は続き、おひつご飯とやっぱりしじみ汁を堪能してデザートで〆た。
ごちそうさまでした。

大満足でお腹も満ちたところで、部屋から庭園に出られるのでほろ酔いで散策する。
さすがにこの時間に出歩く客は私くらいなもので、庭園の景色を独占しながら歩いた。

夕方とはガラリと変わる宍道湖の雰囲気を眺める。

こうして昼の美食、松江城、遊覧船に夕景色に〆のご馳走、と幸福の詰まった松江の1日が終わった。
明日が旅の最終日。帰るその時まで全力で楽しむために、早めに休もう。
湯をいただき、仲居さんが敷いてくれたふかふかの布団に入る。
いま思い出しても、この日に戻りたい。

つづき

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