散文録

つらつら書くのが楽しい。日記・作品の感想など

映画『AKIRA』を観る

AKIRA』 監督:大友克洋
製作:1988年 配給:東宝

2020東京オリンピックにて
開会式の案に採用されていた事で
以前から気になっていた作品。
原作は未読。

気にはなっているけど
わざわざ見るほどでも…と思っていたが
趣味が合って仲の良い人が
好きな作品ということを聞き
これを機に視聴してみることにした。

あまり日常的に映画を見ないので
「この映画を見る!」と意気込むだけで
自分の中では結構なイベント感がある。

ちなみにAKIRAの事前知識としては
・主人公=アキラではない
・主人公の友人 鉄雄が暴走する話
・グロい
・作画がすごい
・さんをつけろよデコ助野郎!
くらいのゆるい知識しかない。

月初の繁忙期が落ち着いたので
動画配信サイト「U-NEXT」を
このために登録し、家のテレビで視聴。
どうせなら気分をアゲようと
部屋を暗くし、手元にはコーラと
スナック菓子という準備万端で臨み
リビングでのロードショーを堪能した。

以下、思ったことを書き留めておく。
※ストーリーをなぞる感想ではないが
念のためネタバレ注意

 

正直、初見で観たときは
ストーリーにそこまでハマれず
「考えるな 感じろ」系か?とか
思ってしまったりはした。
冒頭の暴走族との抗争のくだりも
「なにやってんだ?」って感じで
割と冷めた目で見てたと思う。

それでも金田のバイクが走り出して
始まるネオンを駆け抜けるところ、
あのシーンはBGMもあいまって
さすが美しくて魅入ってしまった。
ピーキー過ぎてお前にゃ無理だよ」を
言い終わったところで始まるBGM、
あの音の入りが絶妙すぎて、セリフの
終わる箇所から何度も再生したりしている。
金田のバイクの前輪に光が走るところで
私の期待にも電気がはしる。

テールランプの残像、下品なくらい
ビカビカに輝く都会のネオン、
鮮やかな煌めきは何度見ても美しくて
心踊るサウンドと混ざり合って
本当に完成されていると思った。
上記で言ったように、最初に浮かんだ
感想は「なにやってんだ?」って
感じだったけど、観終わって内容を
「そういうもの」として受け入れた途端
この暴走シーンは芸術へと変わった。

このときの獲物を追い詰める山形くんが
ワイルドでカッコよくて、
「野蛮」って言葉が似合う。
やってることは暴力行為なんだけど。

多分、冒頭から技術というか世界観が
作り込まれて完成されすぎていたのが、
原作を知らず世界観にも馴染みのない
者には置いてきぼり感があるというか
最初にハマれなかった理由な気がする。
何度か見るうちにハマる作品だと思う。
この世界観が好きな人、原作ファン、
監督のファンの方などは、逆に
一瞬でのめり込める怪作なんだろうな。

あとの話は結構バイオレンスが強くて、
事前にグロいので注意と言われた割に
グロは平気だったけど、暴力描写は
あまり得意じゃないので、楽しめたかと
いうと微妙なところではある。
とにかくカオリちゃんが可哀想すぎる。
あの子の最期の結末は実は事前に
知っていたんだけど、それだけじゃなく
その前の暴行シーンとかで
結構ダメージ喰らった。
見返してもカオリちゃんの箇所だけ飛ばす。

あと、サウンドの一部が
月曜から夜ふかし」の効果音に
使われてしまっているせいで
シリアスなシーンであのサウンド
耳に入ると
「○○県民 xxしすぎ問題」とか
頭に浮かんじゃうのが残念だった
こっちを先に聴いておきたかった!

作画に関しては冒頭以外も素晴らしくて
ストーリーのハマれなさに意識が
違うところに行きそうになるたびに
「観ろ!」と腕を引っ張られるような
感覚だった。作画を楽しむだけでも
この映画体験には価値があった。

冒頭以外で好きなのは、
鉄雄がアキラの元にたどり着く辺り。
破壊される建造物が生き物のように
蠢き、破壊されているのにイキイキと
して見えるのが不思議な感覚で、
煙やマントがはためく様の動きの
なめらかさは凄いとしか言いようがない。
「よく見とけ!」と言われてるかのような
迫力ある作画だった。

サウンドに関してもどの感想でも
言われていることではあるので
改めて言うのも…という感じではあるが
期待とおり心はずむものだった。
冒頭シーンとエンディングが特に良くて
そこだけ何度も何度も再生して聴いた。

ちなみに作画とサウンドの参考として
4Kリマスター公式サイトに
動画が掲載されていたので貼らせていただく。
サウンドと作画の凄さが垣間見れる。
が、大画面で見るとこんなもんじゃない

youtu.be

あと好きなのは、名セリフ(?)の
「さんをつけろよデコ助野郎!」の
瓦礫の上で対峙するシーン。
「どおしたよぉ?揉め事かぁ?」から
煽りというか喧嘩する気満々で笑った。
鉄雄が長年の恨みを吐き出すところ、
万能を手に入れても結局は劣等感に
終結するところが鉄雄もまだ思春期の
子どもなんだよなと思うし
鉄雄の悲痛さを感じる一方で、
その独白に対し余裕ありそうに
返す金田との精神的余裕の落差に
「こういうところなんだよな」と
思ったりした。

で、色々とグロかったりしながら
物語は結末を迎えるんだけど
あのラストのセリフ等のわからなさは
あえて作られたというか、誰にも
明確な答えにたどり着かせないように
作られた「余白」なのかなと考えた。

で、わからないので自分の中の
あやふやな解釈を抱えたまま
他の人の感想や考察を読んだんだけど
これ、他の人の考察を読むのが面白い!
考察を読んで始めて完結する作品なのでは?

最初は「考えるな 感じろ」ってことか?
とか思ってしまったけど、そうじゃなくて
「余白を与えた 考えろ」って
ことなんじゃないのか?とか
モヤモヤ考えたりして、翌日まで引きずり
好きなシーンを何度も再生したり
こうして映画のサウンドをBGMに
ブログを書いたりしている。
…没入感はないな、とか思ってたけど
割と没入してないか?これ。


総評して
ストーリー以外は素晴らしいなと思える
いい映画体験だった。
別にストーリーが素晴らしくないと
いうことではなく、私の感性の問題。

多分、鉄雄の劣等感や万能感に
より共感できる10代の頃に出逢っていたら
もっと深く刺さったような気もする。
鉄雄にしても金田にしても、
どこか一歩引いた目で見ていたから。

が、いま見ても完成度が高いと思える
間違いなく名作と言えるものだと思う。
あの冒頭のシーンとエンディング、
酒に酔いながらエンドレスで観たい。

 

こうして私が秋にやりたかったことの

・気になってる映画を見たい。
家で見れるから月初が落ち着いたら見る。
感想を書けたら書く。

が実現できたので、とても満足している。

ha49re.hatenablog.com

 

AKIRA』を薦めてくれたxxさんへ。
ありがとう、いい映画体験ができました。